2024年03月11日 19:19
経営の世界では、「数字が語る物語」という言葉があります。それは、企業の過去を反映し、現在を定義し、未来を予測する力を持っています。この物語の中心にあるのが、KPI(重要業績評価指標)です。KPIは、営業利益率、売上高成長率、顧客生涯価値(CLV)など、企業が成長し繁栄するために不可欠な様々な側面を測定します。これらの指標は、企業の健全性を評価し、戦略的な意思決定を導くためにとても重要です。
しかし、これらの指標を単に知っているだけでは十分ではありません。それらをどのように活用し、企業の経営戦略に組み込むかが重要なのです。
本記事では、営業利益率をはじめとする経営者や経営企画部門が注目すべきKPIについて、その定義、重要性、そして計算方法を分かりやすく掘り下げます。また、これらの指標を追跡し、分析するための強力なツールであるBI(Business Intelligence)ツールについても、ご紹介します。BIツールはKPIを経営戦略に組み込むための強い味方になるはずです。
経営者や経営企画部門にとって、KPIは単なる数字以上のものです。それらは、企業がどの方向に進むべきかを示す羅針盤であり、競争の激しいビジネス環境において成功するための道しるべとなるものです。この記事を通じて、KPIの深い理解を得て、より賢明な経営判断を行うための一歩を踏み出していただければ幸いです。
本記事では「営業利益率」や「売上高成長率」、「自己資本利益率」などあらゆるKPIについて理解を深めていきます。以降、架空のNDIS建設(建設業)、NDIS加工(製造業)、NDISフード(卸売業)の3社のそれぞれの数字を比較し、分析を通じて、各企業がどのように業界内で競争し、財務健全性を維持しているかなども見ていきます。
営業利益率とは、売上高に占める営業利益の割合を示す指標です。営業利益は、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いた利益です。
営業利益率は、企業の本業である営業活動の収益力を示す指標として重要です。営業利益率が高い企業は、本業で利益を十分に上げることができているため、財務的に安定していると考えられます。
計算方法:営業利益率(%) = (営業利益 ÷ 売上高) × 100
例)営業利益が100万円、売上高が500万円の場合、営業利益率は以下のように計算されます。
営業利益率 = (100万円 ÷ 500万円) × 100 = 20%
この20%という数字は、売上の各100円に対して20円の営業利益があることを意味しています。営業利益率が高いほど、企業は売上からより多くの利益を生み出していると言えます。
営業利益率は、業種によっても平均値が異なります。例えば、製造業では10%前後、サービス業では20%前後が一般的だと言われています。
さて、ここからNDIS建設、NDIS加工、NDISフードの3社の営業利益率を比較してみましょう。NDIS建設は、一貫して15%の営業利益率を保持しており、効率的なプロジェクト管理とコストコントロールが成功していることが伺えます。これは、建設業界における堅実な収益性の指標と言えるでしょう。
(架空会社)NDIS建設
NDIS建設は、一貫して15%の営業利益率を保持しており、効率的なプロジェクト管理とコストコントロールが成功していることが伺えます。これは、建設業界における堅実な収益性の指標と言えるでしょう。
(架空会社)NDIS加工
NDIS加工は、約20%という比較的高い営業利益率を示しており、特に2023年には少し向上しています。このことから、NDIS加工が製造プロセスの効率化とコスト削減に成功していることがわかります。
(架空会社)NDISフード
NDISフードは2023年に営業利益率が大幅に低下し10%になっています。これは、市場環境の変化や原材料コストの上昇など、外部要因の影響を受けやすい業界の特性が反映されている可能性があります。
BIツールを活用して可視化し、年単位の各社のKPIをご覧いただきました。一般的な企業では月ごとに定期的に分析することで、ビジネス環境の変化に迅速に対応することの重要性を理解することができます。また、業界や市場の特性を踏まえた上で、自社の強みを活かす戦略を立てることが企業成長の鍵となるでしょう。
営業利益率を高めるためには、以下の方法が考えられます。
営業利益率を高めることで、企業は以下のメリットを得ることができます。営業利益率を高めるためには、企業の状況を踏まえた上で、適切な施策を実施することが重要です。
営業利益率は企業のコスト管理と収益性を評価するのに役立ちますが、営業利益率だけを見て経営の全体像を判断することは避けるべきです。営業利益率はあくまでも1つの指標であり、他の財務指標と組み合わせて初めて、企業の真の収益性と効率性が明らかになるからです。
そこで次章では、他の重要な財務指標に焦点を当て、それらが経営にどのような洞察をもたらすかを掘り下げていきます。
データ活用で大切な3つのポイント
みんなでデータ活用するためのBI入門ガイド
営業利益率と並行して、経営者や経営企画部門は他の重要な財務指標にも注目する必要があります。これらの指標は、企業の財務健全性、成長性、効率性を多角的に評価します。
これは企業の売上がどれだけ増加しているかを示す指標です。売上高成長率が高い企業は、事業が拡大しており、将来性があると判断されます。
計算方法:売上高成長率 (%)= [(今期の売上高 - 前期の売上高) ÷ 前期の売上高] × 100
例)前期の売上高が100億円で、今期の売上高が120億円の場合、売上高成長率は20%となります。
売上高成長率は、業種によっても平均値が異なります。例えば、製造業では5%前後、サービス業では10%前後が一般的と言われています。
さて、NDIS建設、NDIS加工、NDISフードの3社の売上高成長率を比較してみましょう。この分析から、各企業が市場でどのように成長しているか、そしてそれぞれが業界内でどのような位置を占めているかが明らかになります。
(架空会社)NDIS建設
NDIS建設の売上高成長率は、2021年から2023年にかけて徐々に上昇しており、建設業界における安定した成長を反映しています。
(架空会社)NDIS加工
一方、NDIS加工は2021年にマイナス成長を経験した後、2022年と2023年には顕著な成長を見せています。特に2023年の大幅な成長率は、製造業界内での同社の強い競争力を示しています。
(架空会社)NDISフード
NDISフードは、2021年にマイナス成長を記録した後、2022年と2023年には成長を遂げています。食品業界の特性上、穏やかな成長が一般的であることを考えると、NDISフードの成長は業界の平均的な動きを反映していると言えるでしょう。
市場の動向、競争状況、そして企業が直面している特有の挑戦を理解するのに役立ちます。また、投資家やビジネスリーダーにとって、将来の戦略を立てる際の貴重な洞察を得ることができるでしょう。
売上高成長率は企業の収益成長の健康状態を評価するための重要な指標であり、経営者や投資家にとって注目すべき要因の一つです。しかし、他の財務指標やマーケット状況との関連性を考慮して分析することが重要です。
自己資本利益率 (ROE: Return On Equity)
ROEは企業が株主の資本をどれだけ効率的に利用して利益を生み出しているかを示す指標です。企業の収益性と資本効率性を評価するための重要な指標であり、経営の健全性の評価に役立ちます。
計算方法:自己資本利益率(ROE)(%) = (当期純利益 ÷ 自己資本) × 100
例)当期純利益が10億円で自己資本が50億円の場合、ROEは20%となります。
ROEは、業種によっても平均値が異なります。例えば、製造業では10%前後、サービス業では20%前後が一般的です。なお、ROEは、企業の価値を判断する際にも用いられる指標です。ROEが高い企業は、将来性があると判断され、株価が高騰する傾向にあります。
総資産利益率 (ROA: Return On Assets)
ROAは企業の総資産に対する収益性を測る指標です。これは、企業が所有する資産をどれだけ効率的に利用しているかを示します。
計算方法:総資産利益率(ROA)(%)= (当期純利益 ÷ 総資産) × 100
例)当期純利益が10億円で総資産が50億円の場合、ROAは20%となります。
ROAは、業種によっても平均値が異なります。例えば、製造業では5%前後、サービス業では10%前後が一般的です。
ここでは、NDIS建設、NDIS加工、NDISフードの3社のROEとROAを2つの折れ線グラフを表示して比較してみましょう。各企業の財務効率のバランスを明らかにすることができます。
NDIS加工はROEとROAの両方が高い水準を維持しており、限られた資本と資産を効率的に活用して業界内で優れたパフォーマンスを実現していると示しています。
(架空会社)NDIS加工
NDIS加工はROEとROAの両方が高い水準を維持しており、限られた資本と資産を効率的に活用して業界内で優れたパフォーマンスを実現していると示しています。
(架空会社)NDIS建設
一方、NDIS建設とNDISフードは、ROEに比べてROAが低い傾向にあり、特にNDISフードは資産の効率的な活用が今後の課題であることが示唆されます。
(架空会社)NDISフード
これらの財務指標は、財務の健全性と効率性を判断するのに非常に有効です。特に、ROEとROAは投資家からの視点で企業のパフォーマンスを評価する際に重要です。
財務指標は企業の内部的な視点から、企業の成長性を分析する際にも役立ちます。しかし、顧客中心の視点から企業の成長性を分析するためには、さらに顧客関連のKPIを活用する必要があります。
次の章では、顧客関連のKPIにスポットを当て、顧客の観点から企業の成長性を分析します。
【チェックシート付き】BIツール導入成功のカギ!
失敗しないBI導入のための13のチェックポイント
ビジネスの成長において、顧客との関係性について知ることは大変重要です。そのため、顧客関連のKPIは、経営者や経営企画部門にとって非常に重要です。企業が顧客のニーズにどれだけ適応し、満足させているかについての情報が明らかになり、企業の持続的な成功に寄与します。
顧客生涯価値 (CLV: Customer Lifetime Value=LTV: Life Time Value)
CLVは一人の顧客が企業にもたらす予想される利益の総額を表します。高いCLVは、長期的な顧客関係と安定した収益を意味します。なお日本国内ではLTV、英語圏ではCLVと略すことが多いようですが、同じ意味の言葉です。
計算方法:CLV=顧客一人当たりの平均利益×平均顧客関係持続年数
または :CLV=顧客単価×平均購買回数×平均顧客関係持続年数
例)顧客単価が1万円で、年間の平均購買回数が2回、顧客の平均顧客関係持続年数が5年の場合、CLVは10万円となります。
NDIS建設、NDIS加工、NDISフードの3社のCLVを比較することで、各企業の顧客関係の深さと持続性に関して洞察を得ることができます。
(架空会社)NDIS建設
NDIS建設のCLVの安定性は、企業が顧客満足度を維持し、継続的なビジネスを確保していることを示唆しています。
(架空会社)NDIS加工
NDIS加工は、顧客関係の持続年数が増加し、CLVが2021年と2022年で2,800,000円、2023年には3,200,000円と増加しています。これは、同社が顧客との関係を深め、顧客からの収益性を高めていることを示しています。
(架空会社)NDISフード
一方、NDISフードは顧客との関係を維持し拡大する上で一定の挑戦に直面しており、CLVの変動がこれを反映しています。この分析は、企業が長期的な成功を達成するためには顧客中心のアプローチが不可欠であることを示しています。
CLVが高い顧客ほど、企業にとって価値のある顧客であるため、CLVを高めることで、企業の収益性や利益率の向上につながります。
CLVを高めるためには、顧客のニーズを深く理解し、顧客にとって価値のある商品やサービスを提供することが重要です。また、顧客との関係を長期的に維持するための施策を実施することも重要です。
企業は顧客を単なる一時的な取引相手としてではなく、長期的な関係として捉え、CLVを最大化するための取り組みを行うことが求められます。
新規顧客獲得率
この指標は、特定の期間における新規顧客の獲得効率を示します。新規顧客獲得率が高い企業は、新規顧客の獲得に成功しており、今後の成長や拡大が期待できます。
計算方法:新規顧客獲得率(%)= (特定期間内の新規顧客数 ÷ 同期間内の全顧客数) × 100
例)対象顧客数が100人であり、新規顧客数が10人の場合、新規顧客獲得率は10%となります。
新規顧客獲得率を高めることで、企業の売上や利益の向上につながります。また、新規顧客の獲得は、既存顧客の獲得にもつながるため、顧客基盤の拡大にもつながります。
顧客離反率(チャーン率)
チャーン率は、顧客がどれだけ離れていくかを測定する指標であり、企業の収益性や利益率に大きく影響します。低いチャーン率は、高い顧客満足度と忠誠心を示します。逆にチャーン率が高い企業は、既存顧客の維持に失敗しており、収益性や利益率の低下につながっていきます。
計算方法:チャーン率(%)= (特定期間内に失われた顧客数 ÷ 期間開始時の顧客数) × 100
例)期間開始時の顧客数が100人であり、解約顧客数が10人の場合、チャーン率は10%となります。
チャーン率を低下させることで、企業の売上や利益の向上につながります。チャーン率は企業の顧客維持力や収益性に大きな影響を与える重要な指標であり、ビジネス戦略において監視されるべきです。高いチャーン率に対処するための適切な対策を講じることが、企業の成長と競争力を確保する上で不可欠です。
これらの指標は、企業が顧客との関係をどのように築き、維持し、深めているかを示します。顧客関連KPIの分析により、経営者は顧客満足度を高め、より効果的な顧客関係管理戦略を策定することが可能になります。
最後にここでもNDIS建設、NDIS加工、NDISフードの3社の新規顧客獲得率と顧客離反率を比較することで、各企業の顧客関係の深さと持続性をみていきましょう。
(架空会社)NDIS建設
NDIS建設の新規顧客獲得率は一定である一方で、顧客離反率が2021年の10.8%から2023年には12.5%へと上昇しています。この上昇は、同社が既存顧客の維持においていくつかの課題に直面していることを示唆しています。建設業界では、プロジェクトの品質、納期の厳守、顧客サービスが顧客満足度とロイヤルティに大きく影響するため、これらの要素の改善が必要かもしれません。
(架空会社)NDIS加工
NDIS加工では、新規顧客獲得率がわずかに減少しているにも関わらず、顧客離反率は2021年の7.5%から2022年には6.9%に減少し、その後2023年には8.0%に上昇しています。このデータは、2022年においては顧客維持の努力が実を結んでいることを示していますが、2023年に顧客離反率が再び上昇していることから、市場環境の変化や競争の激化による影響を受けている可能性があります。製造業では、継続的な品質管理と顧客サービスの向上が顧客維持には不可欠です。
(架空会社)NDISフード
NDISフードは、新規顧客獲得率が一定しているものの、顧客離反率がわずかに増加しています。食品業界の激しい競争と市場の変動性がこの傾向に影響している可能性があり、顧客の維持とロイヤルティの向上が今後の課題となるでしょう。
本記事を通じて、営業利益率をはじめとする重要なKPIについて詳しく解説してきました。これらの指標は、経営の健全性を評価し、戦略的な意思決定を導くために不可欠です。
最後に、これらの指標を追跡し、分析するための強力なツールであるBI(Business Intelligence)ツールについてご紹介します。BIツールは、データの収集、分析、視覚化を効率的に行うことができ、経営者がより迅速かつ賢明な意思決定を行うための支援を提供します。
BIツールを活用することで、営業指標や財務指標などのデータを、グラフや表などの視覚的な形で表現することができます。これにより、経営者や管理職は、データの傾向や変化を直感的に把握することができ、経営判断や意思決定を迅速かつ的確に行うことができます。
BIツールは、企業の経営や業務効率化を向上させるために、欠かせないツールと言えます。経営判断に各種のKPIを利用する場合には、検討をおすすめします。
ここまでいくつかのKPIについて3社比較と共にお伝えしてきました。例えば、NDISフードの「営業利益率」を分析すると、2021年と2022年は約20%の営業利益率を記録しましたが、2023年には10%に大きく下落しています。これは、市場環境の変化や原材料コストの上昇などによるものかもしれない、という仮説を立てることが可能です。では、どのように市場環境が変化したのか、変化の有無は?原材料コストは上昇したのかなど、また別の指標で検証していき、自社の経営状況を分析することが可能となります。
データの利活用と定着化を進めるために重要な「6つの柱」を解説!
データドリブン経営への変革の道
この記事を通じて、営業利益率を始めとする多様なKPIについて深く掘り下げてきました。これらの指標は、経営の健全性を評価し、戦略的な意思決定を導くために不可欠です。財務指標から顧客関連指標、運営効率の指標に至るまで、それぞれが企業の異なる側面を照らし出し、経営者に重要な洞察を提供します。
BIツールの活用は、これらの指標を効率的に追跡し、分析するための鍵となります。データ駆動型の意思決定は、ビジネス環境が常に変化する現代において、企業が競争優位を維持し、成長を持続させるための重要な要素です。経営者や経営企画部門は、KPIを活用し、BIツールを駆使することで、より明確な経営方針を策定し、企業の成功に向けて確固たる一歩を踏み出すことができるでしょう。
NDIソリューションズでは、Domoを利用した企業事例集の公開、セミナーの開催を行っております。
Domoまとめて導入事例集
Domoセミナー / イベント情報
また、実際にDomoを動かしていただけるBI無料トライアルもご用意いたしました。ご興味がある方はぜひ上部メニューよりお申し込みください。
当サイトでは、BIツールに興味のある方へ、参考になるダウンロード資料をご用意しております。「みんなでデータ活用するためのBI入門ガイド」と「統合型BIプラットフォーム Domo基本ガイドブック」は、データ活用やBIツール導入のポイントが把握できる資料になっています。BIツールご検討の参考に、ぜひダウンロード資料をご覧ください。