人事デジタル化からの次章:デジタル化とDXの違いとは?

2022年07月26日 07:30

「民主主義」、当たり前のように浸透して誰しもが知っている言葉だが意外とその定義を問われると具体的に答えられる人は少ないのではないでしょうか。「よく聞くけど、実はあまり分かっていない…」という言葉は案外多いものです。
「DX」や「デジタル・トランスフォーメーション」もその1つであり、最近CMやニュースで良く聞くが具体的にそれが何かを答えられる人は意外と少ないです。
本記事はそんな「DX」について入門的な内容を解説し、デジタル化とDXの違いや、人事部門がDXを始める前に知っておくべきことを記したものです。デジタル化やDXを検討する際のスタートとして参考になれば幸いです。

 

簡単に解説!DXの歴史

人事部門のデジタル化やDXを語る前に、まずはDXの歴史を解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を最近あちこちで聞くようになりましたが「DX」という言葉が生まれたのは今から20年近くも前なのです。

「DX」は2004年、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンの提唱した概念です。そこでは「DXとは、ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と位置付けられていました。

2010年代になると「デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション」という概念がマイケル・ウェイドらによって提唱されます。ここでの位置づけは「デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを用いて組織を変化させ、業績を改善すること」でした。

そして2018年には日本の経済産業省が「DX」の定義を公表しました。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」というものです。
少しかみ砕いて言うなら、デジタル・テクノロジーの進展により産業構造や競争原理が変化し、これに対処できなければ、事業継続や企業存続が難しくなってしまうため、競争環境 、ビジネスモデル、組織や体制を再定義し、企業の文化や体質を変革する必要がある、と言うことです。つまり変化に俊敏に対応出来る企業へ変わる必要があると言っているのです。
ただ新しい技術を取り入れれば良いという訳では無く、企業の文化や体質を変えて新たな価値を創出する考え方こそが「DX」なのです。

 

人事部門のデジタル化とDXって何が違うの?

「デジタル化」という言葉も以前からありました。
「DXは最近聞くようになったけど、デジタル化とは何が違うの?」と感じる人も多いのではないかと思います。

「デジタル化」とはアナログをデジタルへ変えるという意味です。つまり、「人のやっていたことを、コンピューターで処理できる様ようにすること」です。
例えば日常生活で言うと「アナログ放送」から「デジタル放送」に代わったことや、「紙の書籍」から「電子書籍」になる等が挙げられます。

人事部門におけるデジタル化の例をいくつかか挙げます。

  1. 紙で人が行っていた計算を、PCを使うようにした。
  2. 今まで紙を使っていた申請書や届出書を、データ化して紙の使用量を減らした(ペーパレス)
  3. 会議や面接など直接相手と会っていたが、Web会議で行うようにした。

等です。

これらの様な既存の改善を行い企業活動の効率向上と持続的な成長をもたらすものを「デジタイゼーション」とも呼びます。

そんな「デジタイゼーション」に近い言葉に「デジタライゼーション」という言葉があります。
こちらは「デジタル技術やデータを活用し新たな価値を創出する」というものです。

具体的にいくつか例を挙げますと

  1.  自動車販売→カーシェア/サブスク
  2.  ビデオレンタル→ストリーミング配信(動画配信サービス)
  3.  電話や郵便→SNSやチャット

等です。

この様に既存の「改善」ではなく、新たな価値や破壊的競争力を創出し、既存の「破壊」を生み出す事を「デジタライゼーション」と呼びます。

では、DXはデジタライゼーションとはなにが違うのでしょうか。デジタライゼーションでの価値創出だけに留まらず、企業に関わる文化・体質までも変革していくのが「DX」です。
つまり「DX」とは単なる技術の導入に留まらず、組織全体の変革をもたらすことを意味します。デジタル化は単に手段に過ぎず、その先にデジタイゼーションやデジタライゼーションがあり、最終的な目的としてDXが存在するのです。
人事部門のDXも同様に業務のデジタル化に留まるものではありません。人事部門、さらには全社の組織文化や体質にまで影響を与えていくものとして取り組みべきものです。

 

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デジタル化とDXで変わるITの役割の変化

「DX」を推進する前と後で大きく変わるものとして、ITの役割に対する考え方が挙げられます。
従来、デジタル化でのITとは主に業務の合理化の手段であり、生産性の向上やコストの削減、時間や納期の短縮など省力化とコスト削減を軸にした達成基準を明確に設定できましたが、DXではそれ以上の役割が求められます。
一方「DX」においてITは競争力の源泉として位置づけられ、新たな価値の創出や競争力を生み出すために不可欠とされます。DXに求められるのは「新規性」や「スピード」であり、それらが軸となります。従来のデジタル化とは異なり達成基準をあらかじめ定めることが難しいのです。

そのため、従来は目的と達成基準を明示すれば専門家にほぼ丸投げ等が可能でしたが、DXではそうは行きません。
達成基準をあらかじめ定めにくく、新規性やスピードが求められるDXでは自社の部門が責任を持って主導する「内製化」と専門家との「共創」で進めていく必要があります。
達成基準や推進するための道筋が定められない以上、高速な試行錯誤と改善が求められチームで一丸となり正解を探す必要があるからです。
内製化は自社内で実践的なノウハウを持ち、責任の所在を明確にし、また開発や改善スピードを早める果があります。
そこに専門家との共創を加えることで自社にはない高い技術力や異なる価値観、視点を手に入れ、ノウハウやスキル不足を補うことが期待できます。

 

人事部門のデジタル化からDXの検討を始めましょう

人事部門においてもデジタル化とDXの違いが明確に現れます。例えば、従来の人事部門では紙の書類を電子化するなどのデジタル化が行われてきましたが、DXではAIやビッグデータを活用して人材の採用や育成のプロセスを革新したり、社員の働きやすさ向上が求められます。

では人事部門でできるDXのヒントとして、人事部門の役割を考えてみましょう。
人事部門の役割としては社員が働きやすい労働環境の提供、社員満足度の向上、人事制度の最適化等が挙げられます。
社員の満足度の向上に焦点を当てて考えてみます。人事部門は社員から働く上での問い合わせが何かと多い部門です。その対応策としてAIチャットボットを導入するとします。
人事部門の人々も社員から問い合わせが来てもすぐに返せるわけではありません。定時になれば退勤しますし、24時間働くこともできません。
AIが自動で質問に回答してくれるAIチャットボットを導入した場合、社員が24時間いつでも質問しても即座に回答が得られる様になり、人事部門での問い合わせへの対応が減るので、即座に返信をくれるスピードや24時間いつでも質問が出来るという価値が生まれます。

このように人事部門の役割や価値を考え、「デジタル技術を活用して、会社にどんな価値を提供できるのか?どんな変革をもたらすことができるのか?」ということを検討していけば、自社で実現すべき人事部門のDXの姿をイメージできると思います。
今回解説したDXの意味や価値を参考に、ぜひ御社でのデジタル化から始める人事部門のDXを考えてみていただければ幸いです。

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